メタ位選択的なC-H結合活性化反応

ここ一年くらいバイトで有機合成化学協会誌の新しい合成の作図をやっているのですが、そこで気になったけど載せられなかった論文を一つ。

Copper(II)-Catalyzed meta-Selective Direct Arylation of α-Aryl Carbonyl Compounds
H. A. Duong, R. E. Gilligan, M. L. Cooke, R. J. Phipps, M. J. Gaunt, Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 463

不活性なC-H結合を官能基化する反応は難しく無理に官能基化しようとするといろんな位置のC-Hが官能基化されたものの混ざりになったり、ありとあらゆるC-H結合が官能基化されて化合物が壊れてしまったりします。

不活性→反応させるために必要なエネルギーが大きい→化学的に非選択的な反応になる、というロジックです。

そんなわけで、C-H結合の選択的な活性化反応はなかなかホットなトピックです。

さて、銅を使って芳香環のメタ位のC-H結合を選択的にアリール化したという論文が出ました。

A Meta-Selective Copper-Catalyzed C-H Bond Arylation
R. J. Phipps, M. J. Gaunt, SCIENCE, 2009, 323, 1593

ごらんのとおり、いろいろな基質でメタ位にフェニル基が入っています。この論文で著者らはアミドのカルボニルが銅のメタ位への挿入を補助してると推測しています。

初めのACIEの論文はこれとどう違うかというと、directingしてるアミド基の構造がちょろっと変わっています。芳香環に直接ついてる原子が変わっているので基質の反応性はかなり変わるかと思われますが、これまた様々な基質でいろんなアリールが刺さっています。収率もいい感じだし条件も比較的温和です。

いい反応だなと思いましたがその高い基質許容性のために一般式の作図が面倒なので、提出した新しい合成の原稿にはほかの論文を選びました。

ま、バイトなんてこんなもんだよね。