Pactamycinの全合成

ACIEを眺めてたら全合成の論文を発見したのでメモ代わりに。

Total Synthesis of Pactamycin

S. Hanessian, R. R. Vakiti, S. Dorich, S. Banerjee, F. Lecomte, J. R. DelValle, J. Zhang, B. Deschênes-Simard, Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 3497

Pactamycinは高度に官能基化されたシクロペンタン骨格を持つ天然物で、そこまで大きな化合物ではないものの、合成するとなるとその骨格への立体選択的な官能基の導入とそれに伴う副反応の制御が大事になってきます。

この手の化合物は官能基が少ないうちはだいたいセオリー通りに反応が進みますが、官能基が混み合ってくる合成終盤に差し掛かるにつれて予想外の反応が起きたり単なる保護基の脱着がうまくいかなくなったりして一歩進んで二歩下がるを繰り返すことになります。

化合物が複雑化するにつれ過去の実験結果からの予想は困難になり、やってみて出てきた結果にシミュレーションのデータをこじつけるというラフプレイが横行しています。

それだけに合成計画の初期段階、すなわちどの程度官能基化された化合物から出発してどういう順番で残りの官能基を入れていくかが腕の見せ所になってしまうわけです。

この合成ではC1,7位の立体をL-Thrから誘導し、そこから増炭した後クライゼンで巻き込んでシクロペンテノン誘導体にしています。そこからはちまちま官能基を増やしていって、オキサゾリンで保護していたアミノ基を外してイソシアネートを負荷させることでグアニジノ基を導入しています。

やはりここで苦戦したようで、あっちこっちの官能基と反応した副生成物が論文の端っこに見え隠れします。

僕は合成の論文を読み込むのが苦手なので、載っていないもののなかにどのような実験が行われていたのかは分かりませんがきっと大変だったんでしょう。

ごくろーさんって感じですが、こういう肉体労働を僕はやりたいとは思いません。好きな人がやればいいんじゃないかと思います。