ディーエスアルダーゼみつかる

世の中には様々な反応を触媒する酵素があります。触媒する反応の種類によって名前がつけられておりタンパク質分解酵素だったらプロテアーゼ、リン酸化酵素だったらキナーゼとかそんな感じです。これら酵素が触媒する反応の多くはエステルやアミドの縮合もしくは加水分解、あるいは酸化還元反応であることが多く反応形式自体はシンプルな場合がほとんどです。

しかしながら世の中にはへんなやつもいて複雑な反応を触媒してややこしい化合物を生産している変わり者がいるようです。

Enzyme-catalysed [4+2]cycloaddition is a key step in the biosynthesis of spinosyn A
H. J. Kim, M. W. Ruszczycky, S.-H. Choi, Y.-n. Liu, H.-W. Liu, Nature, 2011, 473, 109

無論こういう酵素があることは推測されていました。なぜなら天然物が立体選択的に取れてくるからです。もし仮に生合成中間がDiels-Alderしやすい感じになったとしても酵素の力なくして片方の立体化学の化合物が取れることはありえません。(ただその酵素が合成経路のどの辺りを担当してるのかは分からないのですが)

今回見つかった酵素はまさにこのDiels-Alderの[4+2]の環化反応を担当しているようです。どんな感じで反応を補佐しているのでしょう?Diels-Alderはうまくすると多くの不斉中心を一気に構築できるお買い得な反応なので酵素エンジニアリング的な手法で複雑な分子を構築する際どうやって狙った構造を構築するのかの大きなヒントになります。

spinosyn Aなる化合物には興味はさらさらありませんが、基質との複合体構造が気になります。どの残基がどんな風にくっついているんでしょうか。構造解析に期待です。